パーソナルジムの売却相談で、
最も混乱が多いのが「事業譲渡」と「居抜き」の違いです。
この2つは、
似ているようで まったく別の売却方法 です。
この違いを理解しないまま進めると、
- 話が噛み合わない
- 条件交渉が進まない
- 最終的に破談になる
といったケースが非常に多くなります。
この記事では、
パーソナルジム売却の実務現場での判断基準をもとに、
事業譲渡と居抜きの違いを分かりやすく解説します。
居抜きとは|パーソナルジム売却における位置づけ
居抜きとは、
内装・設備を中心に引き渡す売却方法です。
パーソナルジムの場合、
以下のようなものが対象になります。
- トレーニングマシン
- 内装(床・壁・鏡など)
- シャワー・更衣室
- 受付・備品
居抜きの特徴
- スピードが早い
- 手続きが比較的シンプル
- 顧客・運営は引き継がない
- 営業停止後でも成立するケースがある
実務上、
「事業としては終わっているが、場所としては価値がある」
というケースで多く使われます。
居抜きが向いているパーソナルジムのケース
以下に当てはまる場合、
居抜きが現実的な選択肢になることが多いです。
- すでに営業を停止している
- 会員がほとんどいない
- 事業としての継続は難しい
- 移転・閉店が決まっている
- できるだけ早く手放したい
この場合、
「事業を売る」より「設備と場所を引き継ぐ」
という考え方になります。
居抜きの注意点(実務で多い落とし穴)
居抜きはシンプルに見えますが、
注意点もあります。
- 賃貸借契約で転貸・譲渡が禁止されている
- オーナーの承諾が必要
- 原状回復義務との兼ね合い
特に、
不動産契約を確認せずに進めると、後から問題になる
ケースが多く見られます。
事業譲渡とは|パーソナルジム売却の本命パターン
事業譲渡とは、
パーソナルジムという事業そのものを引き継ぐ売却方法です。
具体的には、
以下を含めて引き継ぎます。
- 会員情報
- 運営ノウハウ
- ブランド・屋号
- 設備・内装
- (場合によっては)スタッフ
事業譲渡の特徴
- 価格は高くなりやすい
- 手続き・調整事項が多い
- 稼働中のジム向き
- 引き継ぎの設計が重要
実務上は、
「まだ動いているジム」ほど事業譲渡に向いています。
事業譲渡が向いているパーソナルジムのケース
以下に当てはまる場合、
事業譲渡が成立しやすくなります。
- 現在も営業している
- 会員が一定数いる
- 売上は大きくなくても回っている
- 内装・設備が使える状態
- 引き継ぎ期間を確保できる
この場合、
「場所」ではなく「事業」として価値を評価されます。
事業譲渡の注意点(実務目線)
事業譲渡には、
居抜きにはない注意点があります。
- 個人情報(会員データ)の扱い
- 引き継ぎ期間の設定
- 契約書の作成
- 不動産オーナーとの調整
ここを曖昧にすると、
買い手が不安を感じ、話が進まなくなります。
事業譲渡と居抜きの違いを比較
| 項目 | 居抜き | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 引き継ぐもの | 内装・設備 | 事業全体 |
| 会員引き継ぎ | なし | あり |
| 手続き | シンプル | 多い |
| 売却スピード | 早い | 条件次第 |
| 価格 | 低め | 高くなりやすい |
| 稼働状況 | 停止後でも可 | 稼働中が前提 |
どちらを選ぶべきか?判断基準はこれ
判断基準は、
実務上とてもシンプルです。
- 稼働中・会員あり → 事業譲渡
- 閉店・移転・停止後 → 居抜き
ただし、
この2択で決めきれないケースもあります。
迷った場合は「両方検討」が正解
実務では、
最初からどちらか一方に決めない
ケースが非常に多いです。
- 事業譲渡で打診
- 難しければ居抜きに切り替え
という 二段構え にすることで、
成立確率は大きく上がります。
よくある誤解|事業譲渡の方が必ず得?
よくある誤解が、
「事業譲渡の方が必ず高く売れる」という考えです。
実務では、
- 条件が複雑になりすぎて破談
- 時間がかかりすぎて機会損失
- 最終的に居抜き以下の条件
というケースも珍しくありません。
状況に合わない売り方を選ぶことが最大の失敗です。
FAQ|事業譲渡と居抜きでよくある質問
Q1. 事業譲渡と居抜き、途中で切り替えることはできますか?
A. 可能です。
実務では、最初は事業譲渡として進め、
条件が合わなければ居抜きに切り替えるケースはよくあります。
重要なのは、最初に選択肢を狭めないことです。
Q2. 会員が少なくても事業譲渡はできますか?
A. できます。
会員数よりも、
- 稼働しているか
- 引き継ぎが現実的か
が重視されます。
少数でも継続性があれば評価されます。
Q3. 居抜きだと価格はかなり下がりますか?
A. 事業譲渡よりは下がる傾向があります。
ただし、
原状回復費用を考慮すると、
結果的に居抜きの方が手残りが多いケースもあります。
まとめ|正解は「状態に合った売り方」
パーソナルジムの売却では、
事業譲渡か居抜きかを正しく選ぶことが最重要ポイントです。
- 稼働中なら事業譲渡
- 停止・移転なら居抜き
- 迷うなら両方検討
この判断だけで、
結果は大きく変わります。
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